Russian Indie Guide-ロシアのインディーロックガイド

ロシアのインディーロック、その知られざる素晴らしき世界

日本語で分かる普通のロシア

1420 by Daniil Orainより

ここまでいろいろとロシアの音楽について書いてきたが、ロシアの普通の人々の生活はどんな感じなんだろう?と思う方も多いのではないかと思う。アメリカやイギリスの音楽を聴く時、映画やドラマなどで現地の生活はなんとなく伝わってくるのでバックグラウンドは理解しやすいが、ロシアのホームドラマなんて日本では全く放送されないのでさっぱり分からない。また、本屋でロシアものを探しても政治や軍事関係ばかりで、普通のロシア人の生活が窺えるものは全然ない。
そんな訳で、私もロシアの音楽を掘り始めたと同時に手探りでロシアの情報を集めるようになった。この記事では私自身が役立った「日本語で分かる普通のロシア」の情報ソースを挙げていきたいと思う。

YouTube

いろいろ調べていくうちに、若い在日ロシア人のYouTubeチャンネルがたくさんある事に気付いた。皆さん非常に流暢な日本語でロシアと日本の違いなどを話していて、普通のロシアの暮らしが少し伝わってきて親近感が持てるようになった。代表的なチャンネルを紹介したい。

ピロシキーズ

私が最初に見始めたロシア人YouTuberチャンネルは「ピロシキーズ」だった。ロシア生まれ日本育ちのタレント小原ブラスさんと中庭アレクサンドラさんが、コテコテの関西弁で面白おかしく話すチャンネルで、その漫才のようなやり取りが本当に楽しくてしばらくの間毎日見ていた。フジテレビの「アウトデラックス」で「面倒くさいロシア人」として出演していた小原ブラスさんのキャラクターは大好きだったので、YouTubeをやってると知って飛びついた。
内容は日本人が知らないロシアネタと共に、彼ら独特の下ネタ満載面白動画や時事ネタなど多岐に渡る。話術が突出しているので、どの動画もとても面白い。

彼らは見た目はロシア人だが、子供の頃から日本で育っているので中身は日本人だ。ここが他のロシア人YouTuberと違う所で、日本育ちで海外にルーツを持つ人間としての動画もかなりある。ブラスさんは元々コラムニストとしても活動していただけあって、非常に論理的に話し、視点も鋭い。彼はゲイを公言しているので「ビッチ」なユーモアに包んでいるが、常にマイノリティのアイデンティティを追究している硬派な人である。

私は彼らのチャンネルを2020年くらいから見ていたが、2022年のウクライナ侵攻で動画の内容も緊迫したものになった。ブラスさんは頭が良く弁が立つので「ロシア人代表」としてウクライナ侵攻を扱ったテレビ番組に引っ張りだこになった。彼は現在日本で一番有名なロシア人だろう。
侵攻が続く中、いつまでも深刻な内容の動画ばかりではファンも離れてしまうので、しばらくしてから徐々に元のような面白動画を投稿するようになった。しかしブラスさんが有名になってきたので多忙になったのと、それぞれやりたい事が出てきたのか、二人は別々の個人チャンネルも立ち上げた。元々ピロシキーズは同じようなバックグラウンドを持つ二人として芸能事務所によって組まされたコンビなので、あくまでもビジネスパートナーだ。とはいえ解散はしてないそうである。ピロシキーズとしての動画はあまり投稿されなくなったが、過去の動画はいろいろと目から鱗のものも多いので一見の価値あり。

↑これは数奇な人生を送ってきた人へのインタビューで有名な「街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜」にブラスさんが出演した回。ピロシキーズの動画では話さなかったような事も話していたり、移民についての思慮深い意見など、非常に聡明な人だとよく分かる。MXテレビの「5時に夢中!」見たいんですが、名古屋じゃ見られないんですよ!配信とかやってないでしょうか?

あしや

あしやさんは最古参の在日ロシア人YouTuberだ。2023年現在で来日12年だそうだ。子供の頃から日本のアニメが大好きで独学で日本語を学び、ロシアの大学で日本語を専攻して日本にやって来たそうだ。彼女はロシア連邦タタールスタン共和国の出身で、民族的には「ロシア人」ではなくタタール人だ。あしやさんのチャンネルで初めて明確に「タタール人」という民族を意識したが、顔立ちはロシア人よりもちょっと彫りが浅くて日本人にとっては親しみやすいかもしれない。タタール人は日本語で「韃靼人(だったんじん)」と呼ばれたテュルク系民族なので、ちょっとアジア系も入っているからだろう。ロシアを代表するロックディーヴァ、Zemfiraタタール人だが、確かにあしやさんに少し顔立ちが似ている。

あしやさん(名前はAshiyaでひらがな表記)のチャンネルは2012年からあるので動画数も膨大だが、内容はロシア文化や社会の紹介、上↑の動画のような在日ロシア人や旧ソ連圏出身者へのインタビュー、ロシアと日本の文化比較、後は普通に食レポとか旅行動画などである。ウクライナ侵攻後はロシア情勢についての動画も多い。彼女も最古参ロシア人YouTuberとして小原ブラスさんと一緒にテレビのウクライナ侵攻関連の番組に結構出ていた。

彼女はロシアという国があまり肌に合わないようで、とにかく日本に帰化したいというのが動画からひしひしと伝わってくる。コロナ禍の頃は精神的に不安定な動画もあって心配したが、やはり最古参という安定感は強い。ビザなど日本に住む外国人の悩みもリアルに話してくれるので、是非一度どうぞ。

安涼奈 /Alyona

アリョーナさん(表記は漢字で安涼奈)は南ロシア出身でサンクトペテルブルク大学から東京大学を卒業した、とんでもない秀才である。彼女もあしやさんのように日本のアニメが大好きで(「カードキャプターさくら」が死ぬ程好きらしい)来日した人である。在日ロシア人YouTuberにはこのパターンが非常に多い。
彼女のチャンネルもロシアと日本の文化比較、ロシア情勢などだが、登山好きで鉄ヲタという所が異色である。
来日してしまう程日本が好きだから仕方ないが、「日本大好き」動画がちょっと多過ぎるかな、というきらいはある。でも彼女は理路整然と話すので、クオリティは保証する。
在日外国人チャンネルでは再生数稼ぎに「日本大好き」「日本素晴らしい」動画を連発する傾向があるので、その点は留意しておく必要はあるだろう。こういう動画は国力を失った日本を直視できない爺さん達がゾロゾロ釣れるので、ついついやってしまうのだろう。

在日ロシア人YouTubeチャンネルはあくまでも個人の見解で動画を発信しているので、幅広く見る必要がある。特に今は政治的に緊迫状態なのでなおさらである。たくさんのチャンネルを見て、その平均値を出すような見方をお勧めする。ここで挙げた3つのチャンネルは質が高いので、この辺からコラボ相手のチャンネルを見ていけばなんとなくロシアという国が分かってくるだろう。

1420 by Daniil Orain

1420 by Daniil Orain」はロシア国内のストリートインタビューのチャンネルである。ダニイル・オレイン君という若いモスクワ在住の男性が街頭で一般市民にインタビューし、英語字幕が付いているという海外向けのコンテンツだ。元々はロシア人にLGBTについての意見を聞くという目的のチャンネルだったそうだが、ウクライナ侵攻で政治的な質問が多くなり、世界中から視聴されるチャンネルとなった。

このチャンネルを初めて見た時、まず内容よりも話す人々の様子に感銘を受けた。それまでにロシア人の国民性だったりステレオタイプな性格だったりを調べていたが、「ロシア人は知らない人には笑顔を見せない(ただし打ち解けると非常に温かい)」というのがとにかく多かった。在日ロシア人YouTuberは笑顔満載だが、それは日本化しているからなのかと思っていた。初めて1420を見たのは侵攻開始一か月後くらいだったと思うが、この動画ではみんな見ず知らずのインタビュアーにニコニコと答えるではないか!「ロシア人も我々と全く変わらないじゃん!」という、今思えばごく当たり前の事に衝撃を受けたのであった。これは動画というものならではの強さである。たくさん動画を見ていくうちに、確かに中高年の人はあまり笑顔では答えない傾向があるかも知れないと気付いた。要するに笑わないというのはソ連時代のイメージなのだろう。この動画のインタビュー対象は若い人が多いので、西側の若者と何ら変わることなく笑顔を見せる。
また基本的にモスクワでの撮影が多いが、モスクワの人達は老若男女問わず非常におしゃれで、小綺麗な服装をしている。アメリカの様に極端に太った人もほとんどいない。撮影場所が大学の近くが多い、というのもあるとは思うが。

このインタビューでは「我々は洗脳されていると思いますか?」というようなあえて単純な質問をする。当然皆「いいえ」と答えるが、「ではウクライナ人はナチスだと思いますか?」というような政府のプロパガンダをぶつけ、この反応を見る、というような手法を取っている。このやり方であれば政府に批判的な答えがあってもそれは答えた方の考えなので、インタビュアーはあくまでも「中立」という立場を取れる。ダニイル君がいつか捕まってしまうのではないかと心配していたが、今も精力的に動画をアップしている。
また再生数が増えるにつれて、ダニイル君がだんだんおしゃれになっていくのも興味深い。

この記事のタイトルは「日本語で分かる普通のロシア」なのに英語チャンネルじゃないか!とお怒りの方、ご安心ください、1420には「ロシア人にインタビューしてみた 1420」という日本語翻訳チャンネルもあります。翻訳している人は日本人ボランティアで、翻訳のプロではないようなのでそれほど滑らかな訳ではないが、やっぱり楽に読めるのでありがたい。ただ、Morgenshternの事を「政権支持のラッパー」と脚注を入れていたりする事もあったので、一部事実誤認もありそうだ。その辺は各自確認が必要。特にロシアの専門家という訳ではなく、普通の人だろう。でも勉強しているのは感じ取れる。
ただ、本家のすべての動画を翻訳している訳ではないし、コメント欄も日本人しか来ない。本家は世界各国からのコメントがあるので、これは個人的にかなり勉強になった。ヨーロッパ各国からのロシアやウクライナに対する感情とか、日本からはなかなか分からない微妙な所を垣間見る事が出来る。

StreetTalk

StreetTalk」は「1420」と同じようなスタイルの英語のストリートインタビューチャンネルだ。現在の所ロシアのウクライナ侵攻に関するテーマが多いが、ロシアだけではなくウクライナやトルコ、ジョージアアゼルバイジャンなどの旧ソ連諸国や、イギリス、中国など世界各国で撮影されている。なので1420のように一人の人物によって編集されたチャンネルではない。この辺がそれほどチャンネル登録者数が多くない理由だろう(StreetTalk:5万人弱、1420:50万人)。

 

そして「StreetTalk」にも日本語翻訳チャンネルの「モスクワ・ストリート 日本語版」がある。こういうインタビューチャンネルも数多くの種類を見て平均値の意見を取るべきなので、いろいろ見てみよう。

ウェブサイト

ロシア・ビヨンド

「ロシア・ビヨンド」トップページより

ロシア・ビヨンド」はロシアの国営通信社であるRIAノーボスチが設立したロシア・トゥデイの運営する多言語メディアである。英語版を始め、スペイン語、フランス語、ドイツ語版など各国語版があり、日本語版もある。ロシア文化を海外に紹介するサイトで、ロシアのライフスタイルや歴史、料理、音楽、映画、ファッション、観光情報など多岐に渡る。日本語版はロシアと日本の文化的交流に焦点を当てた記事も多い。

ロシア国営なのでプロパガンダが気になる所だが、同じく政府系のスプートニクと比べて政治色は少ない(スプートニクフェイクニュースも多いので注意が必要)。というよりも結構記者は政権に批判的なんじゃないかと思う記事もあったりする。音楽の記事でもShortparisを紹介したものIC3PEAKを紹介したものもあったりする。IC3PEAKの記事ではCream SodaやMonetochka、Poshlaya Molly、Littlle Bigなど政府に「外国工作員」認定されているアーティストばかり載っている。政権寄りのTimatiについては皮肉っぽい解説。記者は「文化を担っている」という事で一定の線引きをしているようにも感じられ、プロパガンダ垂れ流しのサイトにはしたくないという気概が窺える。ニュートラルな視線の記事ばかりなので、一応安心して読むことができるだろう。単純に、あまり日本からは馴染みのないロシアのライフスタイルの記事を読むのは楽しい。知らなかった事ばかりだ。

北海道根室振興局

北海道根室振興局のサイトの「北方領土対策課」のカテゴリに、ロシア語やロシアの生活習慣について解説しているページがある。北方領土という緊迫感のあるエリアと日常的に接しているため、ロシア人との交流も多いので実践的な内容である。ざっくりとかいつまんで書いてあるので「明日すぐ使える情報」となっている。

ユーラシアツアーズ

ユーラシアツアーズはロシア専門の老舗旅行会社である。ウクライナ侵攻で結構大変なんじゃないかと思うが、ロシア以外のツアーも扱っている。
ここのサイトではロシア各地の都市情報が載っているので、ビジュアル的にも楽しく読むことができる。現地のオプショナルツアー情報でバーチャル旅行をしたような気分になれる。


以前は古くからやっていると思われる個人のロシア関係サイトもいくつかヒットしたのだが、ウクライナ侵攻後はGoogleで検索してもそういうサイトが出てこなくなり、侵攻絡みの記事ばかりヒットするようになった。ブックマークしておかなかったのでサイト名も覚えていなくてここで挙げる事が出来ない。そういったサイトはソ連時代からロシアとつながりのある人がやっていると思われるものが多く、90年代のHTMLで止まってるんじゃないかと思うような昔懐かしい「個人サイトあるあるデザイン」だったりした。また何かのきっかけで見付かったら随時追加したい。

書籍

小泉悠「ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔」

ウクライナ侵攻でテレビ出演が激増した、東京大学先端科学技術研究センター専任講師でロシアの軍事・安全保障政策の専門家である小泉悠氏の「ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔」は、一般向けに普通のロシアの姿を平易に解説した本である。小泉氏はロシアの軍事専門家であるので他の著作は軍事関係が多いが、この本ではエッセイ的に普通のロシア市民の生活を書いていて非常にとっつきやすい。語り口も柔らかい。発行もウクライナ侵攻後の2022年なのでそういう視点も入っている。小泉氏はモスクワに赴任経験があり、奥様もロシア人である。
前半ではロシア人の気質や彼らの住まい、街並み、食生活などを採り上げているが、所々で軍事オタクらしい目線がチラチラ見えるのが面白い。
最後の二章では軍事専門家の面目躍如といった体で、プーチンが持っている世界観や地政学的な解説、権力への執着といった事をとても分かりやすく説明してくれる。

軽い筆致であっという間に読めるものなので、専門的な解説が欲しい人には不満が残るかも知れない。でもそういったものは小泉氏の他の著作で読めばいい。我々のような西側の人間からするとちょっと理解しがたい現在のロシアの状況(なぜ国民はプーチンの言いなりなのか、なぜ汚職だらけなのかといったような事)を、少しずつ解きほぐすヒントを与えてくれる。

↑この動画は2022年7月公開の、高校生と大学生に向けた東京大学の講義チャンネルのものである。訳分からん戦争をおっ始めたし、実際の所どういう国なのかよく分からない、と思われているロシアを、小泉氏が易しく解説している。大人が見ても本当に面白くためになる内容なので是非一度ご視聴を。2時間の長い動画だが、面白くて引き込まれてしまった。

速水螺旋人・津久田重吾「いまさらですがソ連邦

「いまさらですがソ連邦」は「共産趣味」の人向けに2018年に発行された本である。速水螺旋人氏がイラストと文章、津久田重吾氏が文章を担当している。
ウクライナ侵攻前に発行されたので、「遠い昔の不思議の国」という感じでソ連の事を解説している。イラストをふんだんに使い、細かい手書き文字の解説もびっしりあるのでボリューム満点である。ソ連邦を構成する各共和国の民族、歴代の指導者たち、KGBやシベリア送り、プロパガンダ、軍備といったものから、ソ連時代の生活などを萌え絵っぽいイラストと共に解説する。ロシアに興味のある人はやはり軍事オタクが多いらしく、この本でもそっちの匂いがプンプンする(各時代の軍服を着せた萌え女子イラスト満載)。

ウクライナ侵攻後の現在では、こういうサブカルチャーとしての「共産萌え」にはちょっと違和感を感じるかも知れない。そもそも私自身も共産趣味もあったのでロシアの音楽に興味を持ったクチだが、あの当時はファンタジーとしてのソ連を消費していたのかも知れない。
でもこの本でソ連時代には極東にユダヤ自治州があったことを初めて知った。ロシアやウクライナでは伝統的にユダヤ人差別がひどく(「ポグロム」と呼ばれるユダヤ人に対する集団的迫害行為がロシア帝国では頻繁に行われた)、スターリン時代に極東の内陸のビロビジャン周辺にユダヤ自治州が作られて多くのユダヤ人が移住した。しかし内陸の厳しい気候とスターリンの大粛清による迫害で人口は減少し、ソ連崩壊後には多数のユダヤ人がイスラエルやドイツ、アメリカなどに出国した。

またマンガやアニメ、ゲームなど、かつての日本のサブカルチャーにはエキゾチックな対象として中華系のキャラクターがよく登場していたが(「ストリートファイター」のチュンリー高橋由美子の「らんま1/2」など)、近年ではこうしたエキゾチックキャラにはロシア系が増えている、というのも面白い発見だった。確かに最近聞くキャラクター名には「アーニャ」とか「ナターシャ」「アナスタシア」なんていうロシア系が多い気がする。
これは今では中国からたくさんの人が日本にやってきてすっかり馴染み深くなり、実際にはチャイナドレスにお団子ヘアの「クーニャン」なんていないのだ、という事に気付き、より遠い存在で美女が多く、なんとなく武闘派イメージのロシア人キャラは格好の「戦闘美少女」向きだったから、というのが理由なのではないかと勝手に想像しているのだがどうだろうか?

中村正人「日本から2時間半で行けるヨーロッパ ウラジオストクを旅する43の理由」

「日本から2時間半で行けるヨーロッパ ウラジオストクを旅する43の理由」ウラジオストックの旅行ガイドで、2019年発行。2017年から日本からのビザの取得が簡単になり、2020年には日本航空が成田とウラジオストックを結ぶ直行便を就航させたので、「日本から2時間半で行けるヨーロッパ」として一躍注目の観光都市となっていた。物価も安く治安も比較的良く、カニ食べ放題でかわいい街並み、という事で台湾や韓国に次ぐ新たな女子旅の目的地になりつつあったのだが、コロナ禍で勢いダウン。
私がこの本を買ったのはまさにステイホームの期間中で、Apple MusicでShortparisを聴きながら、「コロナが明けたらウラジオストックに行ってみたいなぁ、もしShortparisがウラジオストック公演をしたら見に行っちゃおうかなぁ」などと妄想していたのであった。やっとコロナが明けたと思ったら今度はウクライナ侵攻!制裁でロシアへの直行便はなくなり、とてもじゃないがお気楽に旅行なんていう雰囲気ではなくなった。

とは言え、この本は単なる観光ガイド本ではなく、読み物中心という構成になっている。Instagramのレトロ調フィルターのような色彩のかわいい写真と共に、文化や歴史を丁寧に解説している。おすすめのレストランやホテルの名前を知りたい人には全く向かない本だが(そういうガイドブック的な一覧ページは皆無)、ロシア(ウラジオストック)の空気感が伝わってくる文章を読みたい人には打って付けだ。

ウラジオストックついでに、このピエール瀧の旅動画シリーズも紹介しよう。「ピエール瀧 YOUR RECOMMENDATIONS」というチャンネルは例の一件後(笑)の復帰活動として2020年から始まったYouTubeチャンネルである。ルールがあって、ノープランで現地に行き、瀧の持ち前の人懐っこさで道行く人におすすめのお店や観光スポットを聞いて必ずそこに行かなければならない、というものである。
シリーズシーズン1はウラジオストックで、2020年4月に公開された。コロナ禍直前に収録が行われて、公開はステイホーム期間ど真ん中だった。私は上のウラジオストック本と共にこれを見ながらバーチャルトリップを楽しんでいた。このシリーズの印象としては「とにかくカニ旨そう」「ウォッカ旨そう」だった。
このシリーズは好調なようで、現在はスポンサーまで付いている。海外編は他にモンゴルとマレーシア、コロナ期間中は奄美大島と徳島に行っている。国内も楽しい内容だが、やはり全く物怖じせずその辺の人と仲良くなってしまう、瀧の驚異のコミュ力が目の当たりとなる海外編が面白い。行先もウラジオストックやモンゴルといったあまり観光ずれしてない所なのがいい。



以上、難しいものではなく、気軽にロシアという国を知る事が出来る媒体を紹介した。より専門的な情報は、書籍の著者の他の本を探したり、各自検索してみて探していただければと思う。これで少しロシアのバンドのバックグラウンドが見えてくれば幸いだ。